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黒幕亭劇場 製作ブログ 「黒の巣」

どーでもいい事を書き連ねたり、自作フリーゲームの製作状況などを報告する落書き帳。

EvaliceSaga/50年前ノ記憶②

「お願いします!助けて下さい!
 妹が、妹が高熱で苦しんでいるんです!!」
「ええい、うるさい!
 小汚いガキめ、さっさと失せろ!!」

貴族風の男は、足にしがみついてきた奴隷の少年を無造作に蹴り飛ばした。
それでも少年は諦めない。
泣きじゃくりながら、必死に周囲を歩く身なりの良い貴族達に訴え続けていた。

「お願いします、妹に薬が必要なんです!
 そのお金がどうしてもいるんです!
 どうかお恵みを!」

南の王国ハルタミア、その王都カナン。
大陸の南方に位置する、国土の大半を砂漠に覆われたしゃく熱の大地である。
この国には建国より続く階級制度が存在している。
王家の血を引く貴族は貴族街に住み、国中から集められた富を独占して贅沢な暮らしを続けている。
一方で国外より流れ着いた者や人買いに売られて来た者達は奴隷とされ、
王都東の貧民街に押し込まれて、貴族たちの手足となりひどい扱いを受け続けて来たのである。

少年イヴァンもまた、そうした奴隷の一人であった。
この国において、奴隷にまともな人権などあろうはずもない。
雇い主よりその日をやっと暮らせるだけの安い賃金しか得られない彼にとって、
重病に侵された唯一の肉親たる妹の薬代を用意するのは、簡単な話では無かったのだ。

しかし…。

「貴様…どこの家の奴隷だ?
 まだ自分の立場が分かっていないようだな?
 いいか、良く聞け。
 奴隷が何人死のうが、わしらには関係ないのだ。
 わかるか?
 貴様たちはこの王国の部品なのだ、壊れた部品は取り換えればよい、それだけの事よ。」

そう言い放つと、貴族の男は悠々とその場を去っていく。
周囲にいた人々も、汚いものでも見るかのような冷たい視線を彼に向け、背を向けた。
イヴァンの必死の訴えに、貴族達は誰も耳を貸すことは無かったのである。

そして。
彼の幼い妹ミーアは、熱病に苦しみながらわずか七年の生涯を閉じたのであった。


どれだけ泣いたかわからない。
どれだけ叫んだかわからない。
イヴァンは王都を一人飛び出し、気が付けば宵闇に包まれた広大な砂漠の真ん中で倒れ伏していた。
砂漠は魔物の住処であり非常に危険である。そんな事は重々承知していた。
しかし、彼にとってそんな事は既にどうでも良かった。
もはや生きる意味など何もないのだから。

周囲に魔物の気配を感じる。
唸り声もだんだん大きくなってきた。

「は……はは……
 ゴミクズの僕の最期にはぴったりじゃないか。
 ミーア、僕も今そっちに行くよ…。」

少年はそうつぶやくと静かに目を閉じた。
だが…。

「無事か、小僧。」

全身鎧を着込んだ男性に揺り起こされ、イヴァンは目を開けた。
周囲には魔物の死骸が大量に転がっている。
恐らくこの男がやったのであろう。

「どうして……。
 どうして助けたんだ、僕は死にたかったのに…。」
「うん?何故そんな事を考える?
 お前はまだ若い、人生を諦めるには早すぎるだろう?」

兜を目深にかぶった男の表情をうかがい知る事は出来ない。
しかしその落ち着いた言葉の端々から、彼を本気で心配している様子が感じ取れる。
この男は悪い人間ではないのだろう。
けれど…。

―何も知らないくせに―

少年は心の内より沸々と湧き上がるどす黒い怒りを、
この空気を読まない鎧男に遠慮なくぶつけた。

「僕は奴隷だ!
 妹も病気で死んだ!
 貴族共は誰も助けてくれなかった!
 もう夢も希望も有りはしないんだ!

 だから……!
 だから僕は、もう……!」
「……もったいないな。」
「えっ?」

予想外の男の反応に少年は戸惑った。

イヴァンとディー

「もったい、ない?」
「ああ。
 悔しい想いをしたんだろう?
 貴族共を見返してやりたいとは思わないのか?」
「それは……。」
「せっかくこの世に生を受けたのに、人生を諦めるのはもったいないぞ。」

そう言うと、男は少年に手を差し伸べて来た。

「俺の名はディートハルト。
 世界最強の傭兵を目指して宛のない旅を続けてる。

 行く所が無いならついて来い。
 お前にも、夢を見せてやる。」

何を言っているんだ、この男は。
夢を見せてやる?
どういう意味だろう?

でも……。
これでわずかでも現状が変わるのだとしたら…。


少年は涙をぬぐい、男の手を力強く握りしめた。


挿絵/memeso  文/Hira@黒幕
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テーマ:フリーゲーム - ジャンル:ゲーム

  1. 2017/10/25(水) 02:09:47|
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